風船の行商人


春の市場で足をとめる
私は風船の行商人
行く宛も無く 荷も持たず
追い風の吹くままに足を運ぶ

託した便りは数百を越える
飛ばせど飛ばせど返事は来ない

夏には賑わう遊楽歩道
探すはただ一人 貴方の影

日が沈み辺りの灯りも消える頃
帆を持たぬ船は空へ浮かぶ

ゆらりゆらり 遠く
島の声を聴いて
月の光を頼りに地を見下ろし
手掛かりもまた見つからぬまま夜があける
今宵も貴方は見つからない

秋の穂に七草 すすきの小道
無邪気な子供達に囲まれて
冬には枯れ木とみぞれ雪
また長い一年が幕をおろす

もぅ幾度目の冬を迎えただろう
もぅ長くはないこの命尽きる前に

ひらり ひらり 飛ぶ鳥達の声を聴いて
風に乗った言葉に 耳を澄まし
あぁ貴方よ 一体何処にいるのでしょうか?
また一つ海を越えて

ゆらり ゆらり 遠く
島の声を聴いて
あの日手放した日々を探すけど
あぁ もぅ二度と会うこともできないのでしょうか
失って気付いた私への罰だろうか?